指揮者コラム第7回「身の丈」

『俺のポケットには大きすぎらぁ。』 ルパン三世

時事ネタに走るわけではありませんが、今、世の中、特に私の住んでいる教育の世界で、「身の丈」という言葉が走り回っています。あまりよろしくない意味で。

ただ、ここで、英語民間試験の延期の話をしだすと、いつまでたっても音楽の話にならなくなってしまうので、それはまた、飲み会ででも。

私は、「身の丈」という言葉に、悪い印象がありません。それは、父がよく使う言葉だからです。父は私が若い頃よく、「謙虚になれ」と言っておりました。そして、自分が与えられたステージを一つ一つこなし、フルートともに少しずつ、今でも、「自分の身の丈に合った音楽ができればそれでいい」と言い続け、確実に芸術家の階段を上り続けている人です。

僕の超えられない壁として今も存在し続け、その背中を追い続けていたおかげで、私もこんなに謙虚な天才指揮者になることができました。

「身の丈」とは“自分が現状でもっている力”だと思っています。これを正確に把握するためには、高い自己分析力が必要です。「身の丈」であまりにも届かない課題を自らに課したところで、モチベーションは上がりません。反対に、「身の丈」にあまりにも満たない課題を繰り返しやっていても、自己の成長はのぞめないのです。

すなわち、理想的なのは、「身の丈」より少し上の課題を自らに与え続け、それを乗り越えることで少しずつ「身の丈」を伸ばしていくことなのだと思います。

我々、名前のない合唱団も、長い年月をかけて、少しずつ「身の丈」を伸ばしてきました。そんな合唱団の「身の丈」を正確に理解し、育て続けることができる常任指揮者でありたいです。

平田 由布

※当団常任指揮者、平田由布による不定期連載コラムの第7回をお送りしました。
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